(はじめに)

 私はかつて「ビジネス書」が嫌いでした。と言うのも、以前のそれは「短絡的戦略本」、ないしは、時間と共に風化する応用の利かない類の「時代適応型」のものが多かったからです。ですから、私にとっての良書とは “ビジネス書と位置付けられる本以外” を指すものでした。しかしながら、近年、ビジネス書の中にも良書が数多く見られるようになったと感じるようになりました。

 私が、科学、哲学、宗教、文学、芸術、全ては同じことを現していると気づいたのは、10年ほど前のことです。ビジネス界も人によって営まれている以上、その例外ではなく、これら全てが内包されているといえます。これは、我々が「ビジネス書」とカテゴライズされるものに拠る必要などないことを意味します。つまり、これらをビジネスとの関連付けを持って考えることさえすれば十分なのです。

 しかし、関連付けには少々時間が掛かり、また多くのビジネスパーソンにとって、時間は一番貴重な資源です。従って、彼らが “ビジネス書以外の本” に触れる機会などなく過ごしているであろうことは想像に難くありません。

 以下に紹介するビジネス書は、従来のそれを完全に超えています。これらの書籍の中で、繰り返し出てくるキモの部分は、正しく、これまで私が「ビジネス書以外」によって気づかされてきた重要な要素に他なりません。時間資源に欠乏している経営者、ビジネスマンに、是非読んでいただきたいと思います。
                                                                                          





『7つの習慣』
著者:スティ−ブン・R・コビー 発行:キングベア−出版

 本書はもちろん、我々がとうの昔に食傷気味とした単なる「HOW TO 本」ではない。人が、彼自身の内側を作り上げることなく、戦略や戦術といった表面的テクニックに走るならば、結果的に一過性の成功しかもたらされないことを、既に我々は気づいている。「自分の身に何が起こるかではなく、それにどう反応するかが重要である。」、「行動を測る尺度として、人生の最終の姿を念頭に置いて今日という一日を始める。」 など、本書を読み進めればわかることであるが、これらは単なる精神論的角度から語られているものではない。仕事を、周囲の人々との関わり方を含めた生活全般の中で捉え、随所に語られるエッセンスは、個々の価値観に応じて容易に取り入れ得るところに本書の一番の意義を見出すことができよう。

本書1冊で10冊分に相当するほどの気づきがあるだろう。読み終えたら、本書の提案にならい、さっそく自分だけの「ミッション・ステートメント」を創ることをお勧めする。

『プロフェッショナルの条件』 / 『チェンジリーダーの条件』 / 
『イノベータ−の条件』

各著者:P・F・ドラッガー  発行:ダイヤモンド社

 あなたはドラッガ−の主たる著作の31作(本著3部作を除く)の中で幾冊を読んだであろうか?本書はこれらの著作からの抜粋が大半であるが、しかし、それぞれテーマ毎の切り口で編集されており、非常に読みやすい。この3部作は次に読むべきドラッカーの著作選択を容易にするであろう。

 先ず、「プロフェッショナルの条件」であるが、これは人の働き方や生き方といった、「人」にフォーカスしての抜粋である。  そして「チェンジリーダーの条件」は、マネジメントに関する分野を全著作からの抜粋である。「マネジメント」とは科学であり技能である。誰しもが理解するべきこの「マネジメント」を、本著はその意義から実際までを全方位的に記している。

 最後に、「イノベータ−の条件」であるが、本書は社会的イノベーション(ニューソサエティーの出現)に向けての洞察と理解を我々にもたらすものであり、3部作の中でも、ドラッガ−のテイストを感じさせる本である。  ドラッガ−は語る。ポスト資本主義社会にあっては、もはや人にルーツはない。全ての人が何者にでもなれるほどに、人は社会的、地理的に流動的となる。これは逆に言えば、これからの人は成人後も継続的に学習しなければ機能しないということを意味する。これを受けて、学校の在り方は、内容そのものより継続学習の能力や意欲の醸成に注力する方向にかわるのであると。また、ドラッガ−は「問題に気づいた組織は、例え利益が無くともそれを行う責任がある」とも語る。

   知識社会にあっては、それが人であれ組織であれ、能力は生かさなければ罪であると私は思う。より能動的な在り方が求められる時代の到来を感じる。危機感を体感する意味でも読んで欲しい3部作だ。(ドラッガ−は91歳だそうである。91歳まで生きているというだけでも尊敬に値するというのに、このような著書を現役で書きつづけているとは全く驚きである。)

『ビジョナリーカンパニー』
著者:ジェームス・C・コリンズ & ジェリー・I・ポラス  発行:日経BP出版センター

 ビジョナリーカンパニー(継続的に先見性のある企業)にて最大に機能しているのは基本理念であり、特別な革新ではない。この本には企業にとっての基本理念の大切さが一貫して記されている。精神論ではなく、極めてシステマティックな分析に基づいての考察だ。基本理念を堅持し、これに添う変革を推進してきた企業こそが、ビジョナリーカンパニーとして長い間、存続するのである。こだわる部分と変革が必要な部分を見誤ってはならない。経営者だけでなく、ビジネスに関わる全ての人、必読の書である。

『リーダーシップ論』
著者:P・コッター 発行:ダイヤモンド社

 リーダーシップ不在の環境は、そこで働く人々の能力を鈍化する。つい先日まで、リーダーシップとして語られることの多くは、結局、マネジメントに他ならなかった。バブル期はもちろん、その崩壊後も高度成長期の在り方を引きずる企業がほとんどであったのだ。しかし、変革型リーダーが求められていることが誰の目にも明確な現在、その具体的指南書としての筆頭に本書が上げられよう。今やリーダーシップは、その組織での地位に拠らずに全てのビジネスマンが磨かなければならない重要なスキルである。

 本著には当たり前のことが当たり前に記されている。にもかかわらず、私がここでこの著書を取り上げたのは他でもない、「権力(パワー)と依存性」についての章が新鮮であったからである。この「依存関係」を学ぶことは、リーダーシップスキルに大きく貢献するはずである。この「権力(パワー)と依存性」 の重要性が今後一層増すであろうことは想像に難くない。2章だけでも読む価値はあると言えよう。

『最高経営責任者 CEO』
著者:トーマス・J・ネフ & ジェームス・M・シトリン  発行:日経BP出版センター

 本書は、アメリカを代表する50人の企業リーダーを調査し、彼ら/彼女らに共通する特徴を探り出し、勝利に導くビジネス・リーダーの基本原則をまとめあげたものである。私は本書を、起業から十数年以上が経過し、大組織へと拡大する途上の経営者達へ特に推薦したい。新進のベンチャー企業が、優れた大企業へと躍進を遂げるためには、起業家が真のリーダーになることが不可欠である。本書は、起業を志し事業化に成功した者が、優れた経営者へと成長するための要素となる「ビジネス・リーダーシップ」を学べる教材となるだろう。

『デルの革命』
著者:マイケル・デル  発行:日本経済新聞社

 本書が語る最も価値ある点は、いかに、デルが失敗から多くの事を学び、これの教訓を活かして、不断の自己革新を実践したかにあると思う。デルは苦労知らずの企業ではない。成長途上で、幾多もの「成功の落とし穴」に陥り、失敗を重ねている。しかし、デルは、不断の自己革新という布石をうち続け、その都度、失敗の結果を、新たな成功の要因に変えているのである。なによりもデルの素晴らしいところは、思いきって捨てるべきものを捨て去る決断力と、それを実践するリーダーシップである。私達はデルのようにドラスティックな自己革新ができるであろうか?自分の思い込みや過去の成功が足枷となり、捨てるべきものを捨てられず、視野が狭まってはいないであろうか?21世紀を担う経営者、そしてアントレプレナーを志す人達に読んで欲しい一冊である。